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EXIT DESIGN (for a blog)::『ミシュレティア』 1-4 夏の終わり(1)

『ミシュレティア』 1-4 夏の終わり(1)

(承前)

 ゴメンね。
 ビックリしちゃったかな?
 本当は直接言うべきだったんだろうけど、なんだか怖くて。
 これからも、ずぅっと私のセンセでいてね。お願い。 
 何から書けばいいんだろう?別にこれでもう会えなくなっちゃうとかじゃないから無理して書かなくたっていいんだよね?でもせっかくだからいっぱい書いちゃおうかな。だって、センセって何も訊かないし、私もついつい話しそびれちゃうんだもん。センセがいけないんだよ。私が何も言わなくても勝手に何でもわかっちゃってるみたいなんだもん。ホントはもっといっぱい話したいのに。私のこともっといっぱい知って欲しいのに。
 なんだか、手紙って楽しいね。いつも言えないこと、いっぱい言えちゃうし、センセの理屈聞かされなくて済むし。あ、今ムッとしたでしょ?ウソよ。私センセの理屈っていうか、いろいろ話してくれるの、好きよ。時々ちょっと難しいけど、いろいろ考えさせられるし、きっと私のためになってる。だから、好き。
 なんだか全然本題に入れないね。もっといろいろ書いてもいいんだけど、ホントに書かなきゃなんないこと書くの忘れちゃうとやだから本題に入るね。
 私、引越すことにしました。
 …ってこれを読む頃にはもうわかってるんだよね。そっかそっか。
 何を書いたらいいんだろう?何も言わないで行っちゃってごめんねっていうのは一番最初に書いたからもう書かない。
 …あ、ここ突っ込みどころだからね。書いてるじゃん!って。
 あのね、うん、ピアノの話、するね。
 今年に入って二回目だって言ったよね?覚えてる?一回目って言うのはね、お父さんのお葬式だったの。あれも久しぶりだった。私がピアノ弾くって言ったらお母さん、ちょっと嫌な顔してたなー。もちろん露骨に顔に出したわけじゃないけど。でもね、私のピアノを好きだって言ってくれたのはお父さんだけだったから、他にお父さんに届けられるものって考えられなくて。
 ホントのこと言うとね、私、お父さんが死んだ時も泣かなかったの。だから私にはもう感情なんてものがないんだって思ってた。いつからだろ?みんなが私のピアノを気持ち悪がるようになった頃から自分が無感動になっていくのは気付いてた。でもそれを特別気にしたことはなかったし、それが私なんだって思ってた。でもね、お葬式でピアノを弾いた時、涙が止まらなくなったの。何が何だかわからなくなるくらい泣いたの。ビックリしちゃった。まるで自分じゃなくなっちゃったみたいだった。でもね、今だからわかる。心の奥に溜め込んでた自分が溢れ出したんだと思う。センセがいう物語の力かな?
 センセがあの話してくれた時、ピンと来たんだ。私はピアノを弾くことで救われる。それが私の、えっと、ツウカギレイだっけ?それなんだと思う。
 あの日、センセの前でピアノを弾いて、そうなんだって確信した。だからこれからもときどきピアノを弾こうと思うの。でも寂しくなると嫌だからその時はセンセも聴きに来てね。嫌だって言っても連れてくるからね。それに、センセに聴いてもらうの、なんていうか、今までにない気分だったのよね。よく会場との一体感のあるコンサートとかってあるでしょ?それを個人レベルまで落とした感じっていうのかな?なんだかセンセとひとつになれた気がしたの。わかるかな?とにかくそうなの。
 引越しはね、ホントはお父さんが死んだときから言われてたんだけど、私が何かと理由をつけて断ってたんだよね。お母さんと二人で住むには広すぎるし、それにお母さんも仕事が忙しいから受検の大事な時期に一人だと何かと大変だろうって、おじいちゃんが家に来いって言ってくれてて。そんなに遠くじゃないから学校も変わらなくて済むしね。でも私にはお母さんがお父さんのことを忘れようとして引越したがってるように思えたの。私、なんでも邪険に考えちゃうのよね。でもセンセと会って、いろいろお話して、違ったものの見方ができるようになった。ありがとね。
 お隣さんじゃなくなっちゃうけど、遠くに行っちゃうわけじゃないから、私のこと忘れないでね。ときどき、遊んでね。これからもずっと、私のセンセでいてね。ただの住人でいいから、センセの王国の片隅にいさせてね。ワガママかもしれないけど。
 センセ、好きよ。  沢木ナナ

(続)
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